セルフサービス分析の文化を築く方法とその重要性

エンタープライズ分析にモダンなアプローチを採り入れるための 5 つのステップ

テクノロジーは、ここ 10 年間で大きな飛躍を遂げました。私たちの誰もが、スマートフォンを通じて昼も夜もつながっています。いつでもどこでも好きなときに、誰とでも会話を交わし、ショッピングをし、質問の答えを探すことができます。

私たちは、指先で答えを見つけられることに慣れてしまい、職場でも同じことを期待するようになってきました。そうした期待の一因は、人間が生まれ持った好奇心です。何か新しいものに出会うと、私たちはもっと知りたくなり、知らなければいられなくなるのです。知識は「無知と不安の好ましくない状態を一掃」するので、得る価値があるのだと、研究者の Jonathan Litman 氏 (http://drjlitman.net/wp-content/uploads/2013/11/Litman-2005.pdf) も述べています。何か理解できないものがあると、私たちは不安になります。何かが起きたとき、今後同じ結果を避けられるよう、あるいは繰り返せるように、その理由を知りたいと考えます。

だからといって、最終的な答えや結果をただ欲しいというわけではなく、私たちは発見のプロセスに関わることも望んでいます。好奇心の原動力は、何が、なぜ、どのように、何のために、を理解したいという欲求です。しかし答えそのものは、答えにいたる発見のプロセスほどには理解を深める助けにはなりません。その 2 つがあって初めて、悪い結果を避け、良い結果を繰り返し、新しい機会を見出すための完全な理解が得られるのです。

理解し、答えを得ようとするとき、助けとなるのがデータです。私たちのプライベートな生活でも職場でも、得られるデータの量は増加の一途をたどっています。こうしたデータは、起こったことについて事実、真実、客観的な視点を与えてくれます。データは知識です。日々の意思決定のために、データを使って探索し、問いを投げかけられるようになったとき、私たちは求める理解、洞察、機会を見出すことができます。

ここで重要になるのが分析の文化です。分析の文化を持つ組織は、従業員にデータを探索して答えを見つけられる環境を提供し、従業員の好奇心を満たしながらビジネスを前進させます。

しかしながら、職場にあるツールでは、私たちが答えを見つけるために求め、必要としているデータに、いつもアクセスできるとは限りません。発見や探索を導き、理解する手段を提供するとも限りません。

分析の文化を完全に構築するには、組織にとって最も重要な 2 つの資産、つまり人とデータを結び付けなければなりません。組織では、IT 部門の管理下に置かれた信頼できるセキュアな環境で、従業員がデータを探索できるようにすることが、ビジネスに通じ、背景を知り、インサイトの持つ可能性を最大限に引き出せる人々に力を与えることにつながります。そうした人々は、データを調べ、データでコラボレーションを行い、その分析の結果として適切な意思決定を行うことができます。データを調べ理解するこの能力は、ポストや社内の地位とは無関係です。分析の文化では、誰もが適切なデータにアクセスして自由に探索できます。

シアトル小児病院では、組織全体のあらゆるスタッフに力を与える、このようなデータドリブンな文化を導入しています。アナリスト、マネージャー、臨床従事者、医師、研究員はみなデータ分析を行っており、「何が基準か、私たちはそれに照らしどのように評価しているのか、当院が将来に向けてどのように成長しているのかを明らかにするのに役立っています」と、同病院でナレッジマネージメントディレクターを務める Ted Corbett 氏は述べています。

この文化は、誰もがデータに自由にアクセスできることを意味するわけではありません。その基盤には、IT 部門が一元管理する信頼性に優れた分析プラットフォームがあり、それがセルフサービスを抑制せずにセキュリティを確保する役割を担っています。つまり IT 部門によって、人々は安全な環境の信頼されたデータを探索することができるようになります。

コラボレーションも欠かせない要素です。データや分析結果はすぐ簡単に共有できます。ですから、人々はお互いから学び合い、お互いが発見した結果を土台にして、自身の分析を行いつつ発展させた質問に答えを出すことが可能です。

これを「イネーブルメントの文化」と呼んでいるのは Deloitte 社です。専門サービス企業の同社では、スタッフレベルのチームメンバーがデータ分析を推し進め、チームの他のメンバーとインサイトの発見や共有を行っています。経営陣は適切なツールを社内に導入し、従業員がすぐ簡単に「ひらめき」の瞬間を得ることを可能にしました。さらに、IT 部門がガバナンスとセキュリティを確保して、プログラム全体を支えています。

「社員は以前よりも早く、『次はどうするか』や『ひらめき』の段階に達することができるようになりました。これまで通常見込まれていたより短期間で、積極的に分析を共有するようになっています」と、Deloitte社で戦略オペレーション責任者を務める Ryan Renner 氏は述べています。「それに、社員がそのような関心と熱意を持っていることが組織の上まで実際に伝わり、経営陣からも非常に好意的なフィードバックを得ています」

「これは指揮統制型のアプローチではありません。成功するためのツールを最前線の社員に渡して、彼らが Tableau を使って仕事を進め続けられるようにしています」 - DELOITTE 社戦略オペレーション責任者、RYAN RENNER 氏 https://www.tableau.com/ja-jp/stories/customer/deloitte-competes-analytics-tableau

分析の文化の構築は、一夜にして終わることでも何も考えずに導入できるものでもありません。長期間にわたって、集中的な取り組みを継続し、目的に合った意思決定を行う必要があります。

組織で分析の文化の構築に取り組む際は、次の 5 つのステップが必要です。
1. 新しい役割を IT 部門に導入する
2. 重役による後押しを得る
3. 基盤を作る
4. ユーザーやプロセスに合わせて拡張する
5. 直感と実証的なデータを共に活用する

1. 新しい役割を IT 部門に導入する

エンタープライズアナリティクスに対する最新のアプローチを活用すると、組織ではセルフサービスのためにガバナンスを犠牲にすることも、またその逆も必要なくなります。そして、人、プロセス、テクノロジーを通じて共通の最終目標を達成することを中心に据えた、新しい形の関係が IT 部門とビジネス部門の間に生まれます。

従来の BI では、IT 部門がデータを分析し、発見した結果をビジネス部門に報告するという形でした。このような「レポート作成工場」的なアプローチでは、ビジネス部門は答えを受け取れるものの、状況を引き起こしている原因を常に理解できるとは限りません。また、データを掘り下げて、何の裏側にどんな原因があるのかを理解することもできません。答えの出ていない質問が数多く残り、分析はいつまでも延々と続いていました。

セルフサービス分析の初回サイクルでは、IT 部門が精査したデータソースをビジネス部門に提供し、 ビジネスユーザーが自らデータを分析してレポートを作成できるようにします。このシナリオで、IT 部門 はビジネス部門ができることを増やしてはいますが、両部門は連携を取りません。その結果、秩序のない混乱を招き、データのセキュリティと整合性で問題が発生します。また、ビジネス部門の各分野でも連携とコラボレーションが生じないため、意思決定の不整合も生じていました。

エンタープライズアナリティクスに対する最新のアプローチでは、IT 部門とビジネス部門が連携します。IT 部門は信頼できるデータとコンテンツが一元管理された環境を構築して、ビジネス部門がそのデータにアクセスし、質問を投げかけ、求めている答えを見つけられるようにします。セキュリティとデータの整合性も、ビジネスのアジリティとイノベーションを犠牲にすることなく実現します。

このアプローチは IT 部門の役割におけるパラダイムシフトを示唆していると語るのは、ニューヨーク、ロードアイランド、マサチューセッツ各州の顧客 350 万人に電力を供給する National Grid 社で、IT 部門ディレクターを務める Rory Abbazio 氏です。
かつて同社の人々は、Abbazio 氏が言うところの「Excel 地獄」から抜け出せない状態でした。IT 部門では、データの分析に加えて、発見した結果の報告に使用するスライド 100 枚の PowerPoint ファイルの下準備で、Excel を使っていました。その手間は大きく、時間がかかり、ビジネスリーダーにとってほとんど価値のないものしかできませんでした。
「アナリストたちは何時間もかけて、人々の意思決定をサポートするファイルを作っていました。しかし、これでは別の角度からデータを調べられず、追加の分析もできなかったため、意思決定の役に立っているとは言えませんでした」と、Abbazio 氏は振り返ります。
この状態は、同社がビジネス部門と IT 部門の間にある隔たりを埋めるための対策が必要なことを、明らかに示すものでした。
「誰も使わないような仰々しいシステムは、私たちには無用です。IT はビジネス部門を支えるためにいるのですから。いろいろな意味で IT はバックオフィスであり、フロントオフィスの能力を高めることが仕事です」と、Abbazio 氏は語ります。
Abbazio 氏は、IT 部門の成功とは、ただ期限通りに予算内でプロジェクトを終わらせるだけのこととは考えていません。 IT 部門はビジネス部門と連携して、ビジネス部門が前に進むために必要で、しかも実際に利用されるツールを提供しているか? IT 部門はビジネス部門が分析を行える、そして会社のデータを保護する、信頼の環境を提供しているか? Abbazio 氏はそう自問しています。
この最新のアプローチでは、ビジネス部門が自立する力を得られるだけでなく、分析への取り組みの核において IT 部門もより戦略的な役割を担うようになります。つまり、IT 部門は管理されたデータソースと信頼できるコンテンツを提供し、全社規模の意思決定を促進するデータの一元管理環境へと組織を向かわせることができます。また、信頼できるデータの流れを管理しつつ探索のための安全な環境を提供する、データスチュワードの役割も担います。さらに、利用状況を監視・監査して、確実な導入を促し、ビジネス部門が得ている知識に応じた改善を図ることもできます。この新しい役割において、IT 部門はビジネス部門のパートナーとなります。
「文化の変革は短時間に終わるものではなく、アジャイルに小さな成功を積み重ねていかなければならない取り組みです」
– NATIONAL GRID 社 IT 部門ディレクター、RORY ABBAZIO 氏

2. 重役による後押しを得る

新しい文化を構築する際に重要なのは、その変革を推進できるリーダーを見つけることです。それが成功を左右します。データの活用によって意思決定を推進する組織では、顧客をより深く理解し、機会をとらえ、競争力を強化できます。セルフサービス分析の導入に成功した組織を見ると、重役による後押しがその背後にあったことがわかります。

McKinsey Global Survey (http://www.mckinsey.com/business-functions/business-technology/our-insights/the-need-to-lead-in-data-and-analytics) によると、分析イニシアチブで大きな効果の上がっている分析プログラムを持つ組織は、効果の上がっていない組織より、CEO から後押しがある可能性がほぼ 3 倍高いことが明らかになっています。
重役による後押しは、分析の文化を支える適切な組織構造を構築するうえでも役立ちます。

「効果が上がっている組織の重役はほとんどの場合、分析能力における成功に最も寄与した要因として、経営陣の関与を挙げている。一方、効果が上がっていない組織の重役は、分析を支える適切な組織構造を策定することが最大の課題だと述べている」ことを、McKinsey 社の調査は明らかにしています。

リーダーは、分析イニシアチブを後押しすることにより、会社の視点の変革を導くことができます。リーダーは自らに、次のように問いかけるべきでしょう。誰もが質問できるようにするにはどうしたらよいか?社員は業務に合ったツールを持っているか? 社員が発見を共有するときに他の社員に十分情報が届いているか、共有を促す環境になっているか?

社員の参加を奨励するには、リーダーが賞や表彰を利用すると効果的です。また、リーダー自身の発見を共有して手本を示すこともできます。ある結論を引き出すのにどのデータを使ったかを尋ねれば、対話の活性化にもつながります。以上のようなことを行えば、誰もがデータの価値を活用すべきだというメッセージが社員に伝わるでしょう。

静的な報告書を従来使ってきた重役会議は、こうした雰囲気の醸成に格好の場です。重役会議にインタラクティブな報告書を導入すれば、出席者はその場でデータを探索できるようになります。また、参加者の好奇心が引き出され、理解の欲求も満たされます。

Intuit 社では、会社としてデータドリブンなアプローチを目指すという雰囲気を醸成したのは経営陣でした。競争の激しい確定申告支援業界では、時間が勝負です。また、Intuit 社の 600 名以上のアソシエイトが、考えるのと同じ速さでビジネス上の重要な質問に答えを出せるようにするには、データが鍵となります。そこで、データの価値を高めるために、経営陣は会議で常にデータを活用しています。経営陣は、データに基づくこのアプローチを完全に受け入れており、社員も後に続いてくれることを期待しています。

さらに、アジアで市場を牽引する不動産ポータルの運営会社 iProperty Group では、CIO の Harmit Singh 氏が分析イニシアチブを率いました。Singh 氏とその分析チームは、iProperty 社が持つ 150 万のデータポイントを毎日取り込んでインサイトを収集する、数多くのダッシュボードを導入しました。元々は顧客を対象にしていたダッシュボードが、今では組織全体にも情報を提供していると、Singh 氏は述べています。
「社員は、データに一層の期待を寄せるようになりました。他の社員が出した結果を見て、自分の担当分野でもそれを使えると気づくようになっています」と、Singh 氏は語りました。
重役が分析イニシアチブを率いる Intuit と iProperty の両社では、意思決定の基盤としてデータが活用されるようになっています。

「重要なのは、データに基づいた意思決定の促進です」

– IPROPERTY GROUP 社 CIO、HARMIT SINGH 氏

3. 基盤を作る

分析の文化の中心にあるのは、組織全体を強化するセルフサービス分析プラットフォームです。このプラットフォームは直感的で使いやすく、深く掘り下げた、効果的な分析を実現します。スクリプトやコードを作成する必要はありません。悪戦苦闘がつきまとう複雑なピボットテーブルも、探索と発見の妨げになる制約のあるテンプレートもありません。

適切なツールの導入が完了したら、ユーザーがツールの価値を実感できるようにします。そのためには、誰もが自分のデータを探索し、実践的なインサイトを見出し、発見したものを共有して、ビジネスに対する影響を最大化できる組織、というビジョンや目標を共有すればいいのです。

データをユーザーのワークフローで活用すれば、個々の業務と会社全体の両方を進化させられることをユーザーに示すと、機運の醸成につながります。また、時間と経費の削減や商機の見極めでデータを活用しているユーザーにスポットを当てましょう。そして、自らインサイトを見出せるようにユーザーをサポートして、データが持つ力を直接実感できるようにしてください。

ExxonMobil 社では、「ダッシュボードのギャラリー」と呼ばれるものを通じて、IT 部門が社内のエンジニアと地球科学者にデータを提供しています。IT 部門はさらに、ビジネスユーザーがダッシュボードにアクセスして編集し、自ら分析を行えるようにサポートしています。

「ユーザーの手に力を取り戻しています。ユーザーは自らアクセスして、カスタマイズできます。それぞれの業務の要件を満たすために必要なことは何でも自分でできるようになりました」と述べているのは、ExxonMobil 社データアナリストの Ebony Weddington 氏です。

IT 部門がブエノスアイレスのチームに基本的なダッシュボードを見せたとき、チームはデータを使い、深く掘り下げ、分析時間を大幅に削減する方法を見出しました。考えるのと同じ速さで質問をして答えを出せるダッシュボードがあれば、時間を大きく、正確には 95% 削減できるとこのチームは見積もりました。

データ品質アドバイザーの John Ossege 氏は、「少し考えてみたのですが、私も以前は、彼らが今行っているのと基本的には同じことをしていましたので、この数字は本当に正しいと思います」と語っています。適切なツールと適切なトレーニングにより、ExxonMobil 社の IT 部門は持続可能な文化の基盤を支えているばかりか、ROI 上でも大きな成果を達成しています。

「とても大きな時間の節約になっています」

– EXXONMOBIL 社データアナリスト、EBONY WEDDINGTON 氏

https://www.tableau.com/ja-jp/stories/customer/exxonmobil-data-quality-center-time-savings-huge

4. ユーザーやプロセスに合わせて拡張する

分析の文化には、ユーザーが好んで使うような効果的な分析プラットフォームが不可欠です。 このプラットフォームは、組織全体で簡単に展開、管理、拡張できるものでなければなりません。また、IT 部門が求めるセキュリティとガバナンスの機能も必要です。適切なプラットフォームを導入したら、ユーザーとプロセスに重点を移しましょう。

分析の活用の拡大に合わせ、ガバナンスとセルフサービスのバランスを維持するプロセスを導入していきます。データソース、ワークブック、ユーザーアクセス権を管理する、スケーラブルなシステムの導入も必要です。また、利用状況データを監査しメタデータを最適化するプロセスを明確化します。そして、分析プログラムの拡大を妨げる可能性がある欠落や不備には、すべて手順立てて対処します。

プロセスを導入したら、ユーザーベースを拡大しましょう。そのプロセスとテクノロジーについて、ユーザーを教育します。新しい役割の中でビジネス部門をサポートする最善の方法について、IT 部門へのトレーニングも必要です。また、データへのアクセス・探索・リクエストの方法、さらには発見を共有しコラボレーションする方法について、ビジネス部門にもトレーニングを行います。そして、進捗状況の追跡、ニーズの把握、知識の共有、継続的なディスカッションを行うために、IT 部門とビジネスユーザーによる部門の枠を超えたチームの構築を検討します (文化の変革は短期間で終わるものではないためです)。

meganii.icon COEの結成が必要な訳

さらに、能力アッププログラムを通じて、促進を図り続けることが必要です。発表会やランチセッションのようなプログラムを導入すると、習得状況における格差を見出せると共に、この新しい考え方と仕事の仕方を受け入れられるようにユーザーをサポートすることができます。継続的なサポートこそが成功への鍵です。

フォーチュン 100 企業の Caterpillar 社では、データ分析を行っているビジネスユーザーが、2015 年に250% 増加しました。同社ではこの急速な成長に対応するため、トレーニングとユーザーからのリクエストを担当するオンボーディングチームを立ち上げました。このチームは、データビジュアライゼーションのベストプラクティスをまとめた社内向けの短期集中トレーニングなど、能力アッププログラムを各種用意しています。

「わずか 4 時間という短い間に、新しいユーザーが分析的な思考を身につけ実践し始める様子には、まったく驚かされます」と、Caterpillar 社で新興テクノロジーリードを務める Kevin Hayes 氏は語っています。

利用の拡大を図るために、同チームではユーザーに Tableau のオンデマンドトレーニングも紹介しています。「中級と上級のトレーニングの準備が完了するまでの空白を埋めるためです」と、Hayes 氏は説明しました。

このアプローチは成果を出しつつあります。今年に入って、同チームがビジュアライゼーションコンテストを開催したところ、全社から 500 名の参加者がありました。

「これまでの BI ツールとは異なり、当社ではテクノロジーをビジネス部門に押しつける必要がなくなりました。ユーザーはすぐにその価値を実感していました」

– CATERPILLAR 社新興テクノロジーリード、KEVIN HAYES 氏

5. 直感と実証的なデータを共に活用する

分析の文化の導入とはデータを活用して意思決定を行うことを指しますが、直感をおろそかにするという意味ではありません。分析の文化では、人々は実証的なデータと直感のどちらかではなく、両方を共に活用します。その適切なバランスを取ることこそが重要なのです。

* 優れた分析の実践とは、仮説や直感を出発点にし、データを使ってそれを証明または反証することです。たとえば、直感とそれを立証する市場分析に基づいて、市場進出戦略を策定するとしましょう。しかし、計画を実施し、データを使って成功を測定するまで、そのアイデアが正しかったかどうかはわかりません。

テキサス・レンジャーズのマーケティングチームでは、プロモーションや景品で、ファンが平日の試合に足を運ぶようになるという直感からスタートしました。花火、T シャツ、ボブルヘッド人形に観客が喜ぶというのはわかっていました。しかし、それが今では「ボブルヘッド効果」と呼ばれるようになるとは予想だにしませんでした。

「ボブルヘッド人形のスケジュールを見て、ファン全員への景品をすべて火曜日に設定しました。すると、観客動員数が実際に増えた曜日は火曜日だけでした。金曜日でも土曜日でもありません。週末ではなかったのです」と、マーケティング・広告マネージャーの Sarah Stone 氏は語っています。「すごいわ、この曜日は普通売れないのに景品が売れるようになったなんて、と私たちは大騒ぎでした」

Stone 氏とそのチームは非常に驚き、同じシーズンにボブルヘッド人形の夜を新たに設けることにしました。 「ダルビッシュ有のボブルヘッド人形の日を 9 月末に新しく追加したところ、その試合のチケット売上も徐々に上がりました」と述べています。

実証的なデータで直感を測定することにより、テキサス・レンジャーズでは機会を捉え、ファンを喜ばせることができました。

「データを総合的に見られて心からうれしく思っています」

– テキサス・レンジャーズ・ベースボールクラブ、マーケティング・広告マネージャー、SARAH STONE 氏

まとめ

分析の文化によって、組織は最も重要な 2 つの資産、つまり人とデータをよりうまく活用できるようになります。人々はデータを使ってビジネスと同じ速さで意思決定を行うことができ、また組織では機会を捉え競争力を強化することができます。

個々人がデータを探索できるようになると、個人のレベルを超えた大きな目的を自分のものとすることもできるのです。目的に沿った業務とは、一例を挙げれば、優れたカスタマーサービスの実現や世界にプラスの変化をもたらすことです。組織が目的をどのように達成しつつあるのかを知り、その前進に影響を与えることができると、非常に大きなやりがいが生まれます。

一方、プロジェクトの最終段階で作成済みのグラフを見ても、同じレベルで心を注ぐようにはなりません。内発的報酬は、知識に基づいた意思決定を行い途中で進捗を測定するために、プロセスの全体にわたってデータを活用することから得られます。私たちの好奇心、そして理解したいという欲求が満たされるからです。

それはまた、組織にとってもメリットがあります。エンゲージメントによって、チームの満足度が高まるだけでなく、生産性の高い社員が増え、最終的には収益アップにつながるのです。


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